外科
ヘルニアについて
ヘルニアとは
臓器が本来あるべき場所から体の組織が弱い部分や隙間を通って出てくる病気の総称です。 消化管に発生するヘルニアは、鼠径(そけい)ヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔(へいさこう)ヘルニア、腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアなどがありますが、もっとも頻度が高いのは鼠径ヘルニアです。
鼠径ヘルニアの症状
鼠径部に膨らみができ、不快感や違和感、あるいは痛みを訴えて病院に来られる方がほとんどです。また、立っているとき、膨らみや違和感があるのに、横になると内容物がおなかのなかに戻るので膨らみや違和感がなくなるという症状は、鼠径ヘルニアならではのものです。
鼠径ヘルニアの原因
鼠径ヘルニアの原因には、先天性(生まれつき)と、後天性(生まれた後に起こる)があります。子どもに生じる鼠径ヘルニアのほとんどが先天性で、一方の大人は加齢や生活習慣などの後天性の原因によって起こります。大人の鼠径ヘルニアの原因は、主に加齢による腹壁の脆弱化(ぜいじゃくか)です。鼠径部の腹壁はもともと薄く、腹壁が脆弱になると咳やいきみ、重いものを持つことなどによって腹圧が上昇したときに、強い腹圧に負けて内臓が飛び出すようになります。
鼠径ヘルニア手術について
鼠径部ヘルニアは病気というより構造的な問題であるため、自然に治る事はありません。程度や症状によってはしばらく経過をみることもありますが、治療は手術が原則です。
手術の方法
鼠径部切開法
鼠径部に5㎝程の傷をつけてヘルニア嚢(ヘルニアの袋)を処理しヘルニア門を確認しプラグメッシュ(人工物)を固定します。メッシュはポリプロピレンという人体に無害な素材です。直視下で行い時間は約30分~1時間で終了します。デメリットとしては術後にやや腫れが残ること、腹腔鏡と比較して痛みが強いことがあります。
TAPP法(腹腔鏡手術)
臍に12mmのポート(カメラや鉗子を出し入れする手術器具)、下腹部に2か所5mmのポートを挿入した後、カメラを体内に入れモニターを見ながら行なう手術です。従来法とは違いお腹の中から腹膜を切開しヘルニア門の後ろ側(腹腔内)よりメッシュを挿入し腸が入り込まないようにする手術で後方アプローチとも呼ばれます。創が小さいため痛みが少なく血種・神経損傷・慢性疼痛などのリスクも少なく早期の退院が可能です。
短所としてはヘルニアの袋が残るため鼠径部が暫く手術前と同じように腫れることがあります。ただし、多くは自然に治ります。
また鼠径部切開法と比較するとやや時間がかかること、全身麻酔が必要な事また周りの臓器の状況によっては開腹手術や鼠径部切開法へ変わってしまうことなどがあります。
手術実績
TAPP法(腹腔鏡手術) 鼠径ヘルニア手術 |
鼠径部切開法 (鼠径ヘルニア手術) |
合計 | |
---|---|---|---|
2020年 | 23件 | 6件 | 29件 |
2021年 | 6件 | 17件 | 23件 |
2022年 | 10件 | 15件 | 25件 |
2023年 | 16件 | 9件 | 25件 |
当院では患者さんと相談して手術方法を決めますが、手術に支障がない限り腹腔鏡手術をお勧めしております。また、女性のヘルニア(Nuck管水腫を含む)の治療も行っております。