消化器センター
[日本外科学会外科専門医制度関連施設]
[日本消化器外科学会専門医制度関連施設]
[日本大腸肛門病学会関連施設]
食道癌に対する内視鏡的切除適応
- 絶対的適応
- ・壁深達度 M1、M2 かつ 周在性 2/3以下
- 相対的適応
- ・臨床的にリンパ節転移がなく
- 壁深達度 M3・SM1
- ・壁深達度 M1、M2 で 周在性 2/3以上
- 研究的適応
- ・SM2 以深で局所コントロールを目指す
胃食道癌に対する内視鏡的切除適応
- 粘膜癌(M癌)で
- ・潰瘍(-)の分化型腺癌
- ・3cm以下の潰瘍(+)の分化型腺癌
- ・2cm以下の潰瘍(-)の未分化型腺癌
- 粘膜下層癌(SM癌)で
- ・3cm以下で浸潤が500μmまでの分化型腺癌
上記それぞれの癌で
これらの条件を満たした癌は
内視鏡治療=手術の治療効果(根治度、再発率)を得ることが出来ます。
これらの条件から外れるほど(外れる程度に応じて)
内視鏡治療<手術と内視鏡治療の効果(根治度、再発率)が劣ってきます。
治療終了後、切り取った癌の顕微鏡検査(病理検査)を行い、これらの条件を満たしたか判定します。最終判断は病理検査によって確定しますので、結果次第では、追加で手術を行った方が良い場合もあります。
癌の遺残再発がない、大きさに関わらず病変を一括切除出来る、病理学的検査が十分になされる、という長所から2002年より粘膜下層剥離術(ESD)を選択し治療を行っています。
以下、粘膜下層剥離術(ESD)をシェーマで説明します
- 病変の周囲に目印をつけます。(マーキング)
- 切除する範囲が広いため粘膜下層に薬剤(粘稠度の高い薬剤:ヒアルロン酸ナトリウム)を注入し膨隆させます。従来は生理食塩水を使用していましたが、ヒアルロン酸ナトリウムは分子量が大きく高い粘性のため長時間粘膜隆起が持続すること、物理的な圧迫止血になるため出血が少ないという特徴を持つため、これを使用しています。
- 内視鏡の鉗子口から高周波ナイフを挿入し高周波電流を使用しマーキングのさらに外側を切開します。
- 粘膜下層を剥離し切除終了となります。切除終了後は切除面に出血がないかどうか確認します。血管を認めたら止血鉗子で処置し術後の出血予防をします。終了後は止血剤を散布します。剥離の際、病変が大きい場合や線維化を認める場合は状況に応じて複数のナイフを併用する事もあります。治療時間は病変の大きさ、占居 部位によって異なりますが、30分~3時間です。
内視鏡的粘膜切除術(ESD)の合併症
- 術後の発熱
- 約35%に認めます。ただ、風邪をひいたりして出る熱と異なり、患者様は自覚しない熱がほとんどです。約3日前後で消失します。
- 術後の疼痛
- 約50%に認めます。痛いとおっしゃる方はまずいらっしゃいません。疼痛というよりは、違和感がある、胃が重い感じがする、起き上がろうとすると筋肉痛のような痛みがある等と言う方が多いです。痛みが強ければ、痛み止めを使用します。約3日前後で消失します。
- 術後の嘔気
- 約3%に認めます。あれば、吐き気止めを使用します。約3日前後で消失します。
- 出血
- 術後約24時間までが最も多く、突然吐血、下血する事があります。頻度は5%前後です。緊急で内視鏡治療が必要な事もあります。内視鏡で止血できないときは緊急開腹手術の可能性もあります。
- 穿孔
- 術中、術後に治療部位に穴が開いてしまう事です。頻度は5%前後です。殆どは鼻から管を入れたり、抗生剤を使用したりする事によって治りますが、稀に穴が大きく緊急開腹手術となる場合もあります。
- 術後狭窄
- 術後、傷口が引き連れて、数%の頻度で狭窄を来たす場合があります。ひどいと内視鏡で風船を使って拡張しないといけない場合があります。
- 病変が取りきれないこと
- 術中の様々な理由により予定通りに病変を取りきれない事、途中で中止する事もあります。
症例提示
- ①胃の出口に出来た大きさ45mmの癌で胃の出口の穴の約3/4周性の大きな腫瘍でした
- ②手前(口側)の周囲切開を行ったところです
- ③普通では周囲切開が出来ないので、十二指腸側は内視鏡を反転し切開しました
- ④粘膜下層剥離を進めていきます
- ⑤さらに剥離を続けます。もう少しですね…
- ⑥切除完了です。少し出血したので、グリップで止血しています
- ⑦翌々日の内視鏡所見です。出血も無く綺麗に切り取れました
- 手術時間は約75分で、切除病変は約60mm×45mmでした。