消化器センター
[日本外科学会外科専門医制度関連施設]
[日本消化器外科学会専門医制度関連施設]
[日本大腸肛門病学会関連施設]
胃の中に住んでいる細菌で、1983年にオーストラリアのウォーレンとマーシャルがピロリ菌の培養に成功し、多くの研究でピロリ菌が慢性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんなどの原因になっていることがわかっています。
ウォーレンとマーシャルは、2005年に「ヘリコバクター・ピロリ菌の発見と胃炎、胃・十二指腸潰瘍における役割の解明」という功績に対して、ノーベル賞が授与されました。
日本でピロリ菌に感染している人は約6000万人と推測されています。特に50歳以上の人で感染している割合が高いとされています。しかし衛生環境が整ったことによってピロリ菌に感染している割合は年々減少しており、若い世代では低くなっています。
保険診療でピロリ菌の検査や除菌治療が出来るのは、下記の4疾患です
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
粘膜が傷ついて掘れた状態。
除菌により潰瘍の再発が抑制できます。
早期胃癌に対する内視鏡的治療後
早期胃癌を内視鏡で治療した後、他の部位に癌が発生することが少なくありません。
除菌によりこの癌の発生を3分の1程度に抑制できます。
胃MALTリンパ腫
胃に発生するリンパ球の腫瘍で、除菌により60~80%が治癒します。
但し、除菌療法が無効の場合は、放射線療法や抗がん剤治療が必要となります。
血液の腫瘍ですので、基本血液内科専門医のいる病院への紹介をさせて頂きます。
特発性血小板減少性紫斑病
血小板が減少し、出血傾向を来す病気。
除菌により50%以上が改善します。
基本血液
内科専門医のいる病院への紹介をさせて頂きます。
除菌慮法の実際
通常は3種類の薬を朝夕2回、7日間服用するだけです。
初回の除菌には、胃酸の分泌をおさえる胃薬(プロトンポンプ阻害剤)と2種類の抗生物質(アモキシシリンとクラリスロマイシン)を用います。約7~8割の方は除菌に成功します。
効果判定は除菌療法終了後4週以上の後行います。
注意点
薬の飲み間違い、飲み忘れ、自己判断などで薬を減らすと、除菌に失敗する率が増え、しかも抗生物質が効かない耐性菌を作ってしまう可能性があります。
除菌が不成功な場合
通常は、初回使用したクラリスロマイシンという薬をメトロニダゾールという薬に変更し7日間内服します。再除菌では、8~9割が成功します。お薬を服用する期間アルコールは飲めません。
再除菌も不成功の場合
現在保険診療は行えません。希望の強い場合は、クラビットを使用した除菌もありますが、自費診療となりますので、年齢や他の全身状態と合わせて判断しましょう。
除菌治療の副作用
1.下痢・軟便
頻度として最も多く、約10~30%の方に起こります。1日2、3回の下痢・軟便であれば、薬の量を減らしたり中止したりせず、最後まで薬を飲んでください。
2.味覚異常
食べ物の味がおかしく、苦味や金属のような味がすることが5~15%の方に起こります。
3.皮膚の異常
皮膚に異常が現れることがあります。
注意点
2~5%の頻度で、ひどい下痢、便に血がまじる、皮膚のひどい異常などが起こることがあります。このような場合は、薬の内服を中止して、すぐに主治医に相談してください。
除菌治療の後に生じる問題
除菌が成功した後で、胃の酸が食道に逆流して、胸焼けなどの症状が起こることがあります。
これを逆流性食道炎といいますが、一時的なものが多く、重篤な症状になることはまれです。
尚、除菌が成功した後でも、胃がんが発見されることがありますので、定期的に胃の内視鏡検査を受けるようにして下さい。